日本の財政は赤字です。
2023年度予算では収入が79兆円、一方、支出は年金、借金の返済などで114兆円です。足りない35兆円は国債を発行し、新たな借金で賄います。
借金は増え続け、国債発行残高は1,068兆円とGDPの2倍以上です。日銀が主な買い手です。日銀の資産総額は8月末で748兆円、そのうち596兆円が国債です。
日銀はその資産を裏付けに円を発行しています。
直近の発行残高は674兆円、うち126兆円が銀行券と貨幣、548兆円が日銀当座預金です。
日銀当座預金は、銀行から日銀への預金です。
例えば、548兆円の日銀当座預金のうち、都市銀行からの預金が190兆円です。
直近の都市銀行のバランスシートを見ると資産である「現金預け金」はMUFGが106兆円、SMBCが76兆円、みずほが61兆円です。これらの大半が日銀当座預金にあると考えられます。
銀行は家計や企業の預金を日銀に貸している形です。
家計や企業が預金を引き出すと日銀当座預金から引き出すことになりますが、その裏付けとなる日銀の資産は、買い入れた発行済み国債です。
世の中にある財・サービスの質と量が増えない中で、日銀が保有国債(資産)と紙幣・日銀当座預金(負債)の両方を順調に拡大します。
財・サービスに対する円の価値は希薄化し、インフレが進行します。家計や企業が円の価値下落を嫌がって外貨に変えようとすることもインフレを加速するでしょう。
仮に、災害・紛争等の理由で生産や輸入品調達に支障が起きてインフレ急進を予測し、皆が急いで円を手放そうとする場合は、ハイパーインフレーション(P. Caganの定義では月50%、年間13,000%のインフレ)も起こりえます。
そうなると、手元の円が無価値になってしまいます。起こって欲しくない事態です。
では、どうすれば止められるでしょうか。根本的な解決策は、財政赤字解消のための社会保障費削減と更なる国民負担率の上昇です。現実的には不可能でしょう。
円の価値下落を緊急的に止める方法の一つが”資本移動規制”です。
日本総研の河村小百合先生の資料や記事を参照すると、銀行預金引き出し額の制限や外貨両替の制限が考えられそうです。
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/other/pdf/9946.pdf
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/other/pdf/12327.pdf
そうなると、私たちは資産を自由に処分できなくなります。
これも起こって欲しくない事態です。それでも円の価値が急速に失われて、通貨がなくなる混乱に比べれば、まだ現実的な解決策かもしれません。
資本移動規制による資産凍結の可能性は念頭において、できる準備はしておきたいです。
まず思い浮かぶのは、外貨預金、外貨建資産・不動産・貴金属購入です。資産としての円預金は最小限にするのが安全に思えます。
他には、手元に代替通貨としての外貨現金や貴金属を持っておくことも考えられます。
極端な例は、海外に職住の機会を設けることです。もし、インフレと資本移動規制が進む中で、国内に住み続ける方が大変になった場合は考えざるを得ないかもしれません。
そうならないことを切に祈ります。
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