筆者はフィリピンに暮らした経験からフィリピン株への長期投資に魅力を感じている。理由としては以下の点を挙げたい。
日本に近い
まず飛行機で4時間、時差1時間と距離が近い。環太平洋火山帯に属し、日本の6,800より少し多い7,500以上の島を持つ島国だ。面積は30万㎢と日本の約8割だ。
多くの都市は沿岸部に位置する。うち首都マニラはルソン島の中央部、美しい夕陽で知られるマニラ湾に面する。
海に囲まれていて漁業や水産加工業も盛んだ。内陸部は山と森林が多く山間部には美しい棚田も見られる。米食が基本で、山海の幸に恵まれ、煮込みを中心に魚醤を添えたマレー系の料理にスペイン料理や、中華料理のテイストを取り入れている。
人口は約1.1億人と日本と同水準である。以上の共通点から、市場規模や文化についてイメージを持ちやすい。
温暖な気候と国際性、マブハイの国
南国で一年中温暖である。夏は雨季なので日本の真夏ほど暑くはならない。セブ、パラワンといった有名なビーチリゾートはもちろん、郊外に足を伸ばせば、白い砂浜とエメラルドグリーンの透明な海が至るところに見られる。
一方、首都マニラは一千万人を超える大都市だ。マカティやBGCといった新興のビジネスエリアには高層ビル、コンドミニアム、ショッピングセンターが整備される。2022年11月には三越がオープンした。
ニノイ・アキノ国際空港(NAIA)は、そのマカティやBGCから数キロメートルの距離にある。フィリピン航空やセブパシフィック航空がタイ、シンガポール、インドネシア、日中韓をはじめ、欧米、豪、中東各地へ安価な直行便を飛ばしている。
英語が公用語で世界各地からのアクセスが容易なことから、外資系コールセンターなどのBPO産業の誘致が盛んだ。海外からの訪問者を呼び込むことで不動産業や観光産業の成長が期待できる。
NAIAで飛行機を降りてロビーに向かう途中でMabuhay(マブハイ=フィリピン語でようこそ)の語を目にする。飲食や不動産業もサービスは充実しており、マブハイを体現している。
逆にフィリピンからも多くの人が海外に働きに出ている。Overseas Filipino Worker(OFW)と呼ばれる1,000万人以上の海外労働者から本国への送金がGDPの一割を占めると推定されている。
ビジネス・観光の両面で海外から人を惹きつける魅力がある。筆者にとっても将来移住したい国の筆頭だ。
若く優秀な人材と市場
平均年齢は日本の47歳に対しフィリピンは25歳、これから人口ボーナス期を迎える。
大学教育は手厚く国公立大学に安い学費で通える。筆者が一緒に働いたフィリピン人の若者は勤勉で知的水準が高い方達だった。
GDPは日本の550兆円に対しフィリピンが50兆円程度だ。一人当たりGDPは2021年時点で3,572ドル、若くて優秀な人がこれからどんどん働いて豊かになり、経済規模を拡大していくと期待できる。
株式市場は更に日本との差がある。日本の時価総額約700兆円に対しフィリピンは約40兆円と15分の1以下だ。成熟した日本市場に対しフィリピン株式市場はまだまだ成長の余地を感じられる。
産業の特色
自動車部品、電子部品などの工業製品の中間加工品、石炭やニッケルなどの鉱物資源、農産物、水産物が主な輸出品だ。天然ガスも算出するが、エネルギーは輸入に頼っている。
原子力発電は行われておらず風水力、太陽光、地熱など再生可能エネルギーの活用がビジネスチャンスとなっている。
基本的には内需型でサービス業が盛んだ。アヤラ、サンミゲル、ロペス、アボイティスなどのスペイン系財閥やSM、JGサミットなど華僑系財閥企業が目立つ。
それぞれ銀行、小売、通信、インフラ、不動産、食品などを傘下に持ちフィリピン経済の主要な役割を担っている。
一方で、世界的外食チェーンのJollibeeや再生エネルギーのACエナジーなど海外進出に積極的な企業もある。
投資先としての魅力
米国および自国の利上げの影響もあり直近の株価は冴えない。新興国市場としてのカントリーリスク、為替リスクもある。
個人的には、だからこそ、今後人口ボーナスによる経済成長と合わせて、株式市場も国内外からより多くの投資を引きつける余地が大きいと期待している。
筆者は財務が安定していて配当収入を得られる財閥のコーポレート本社や通信業の子会社、今後、成長を期待できる不動産開発企業を中心に定期的に買い増している。
個別銘柄についても順次記事を書きたい。
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