シリコンより高性能な半導体C-BAs

検討中・反省中

最高の半導体か?

2022年7月21日、MITが”最高の半導体か?研究者達がシリコンよりはるかに高性能の素材を発見。次の課題は実用的で経済的な製法の確立だ”とニュースを発しました。

The best semiconductor of them all?
Researchers say cubic boron arsenide is the best semiconductor material ever found, with two major advantages over silicon: It provides high mobility to both el...

通称C-BAs、Cubic Boron Arcenideの略語で、直訳すると「立体ヒ化ホウ素」です。ヒ素とホウ素の化合物で立体的な構造を持つものです。

筆者が上記の記事のポイントとして理解したのは以下の点です。

  1. 電子の動きと熱伝導の両方の機能が理想的。シリコンより反応が速くしかも熱を発生させない。
  2. もし実用化できればシリコン半導体のデメリットである過熱の心配がなくなる。半導体業界のゲームチェンジャーになる。
  3. 実用化には安定供給のための製法の確立、シリコンウェハーのような純度と、耐久性を確保できるかなど未知の課題が残る。

実用化は未知数だと理解しました。一方で、理想的な素材、ゲームチェンジャーといった力強いワードを聞いて非常に興味を惹かれました。仮に実現した場合のインパクトについて考えてみます。

実用化の場合のインパクトは?

全世界での売上が年間5,558億ドル(2021年、World Semiconductor Trade Statistics)の巨大産業です。そのうちPCなどに使われる集積回路(IC)が4,630億ドルです。

あらゆるガジェットがシリコン製IC使用時の発熱を課題としていて、それが設計や機能面での制約となっていることは私達が皆体感していることです。

仮に実用化するとなれば、半導体業界の素材部門、加工部門、加工装置部門、検査部門までの全工程と、ユーザである最終製品メーカーの全てが影響を受けます。

まさに業界のゲームチェンジャーとなり、私達の生活にも影響することが予見できます。また成長株投資を考えるためのネタとしても十分魅力的です。

あくまで実用化は未知数です。それでもMITが公式に報じていることから実用化の可能性はあると考えます。実用化を仮定した思考実験をもう少し続けます。

半導体業界にどう影響するか?

実用化する場合の影響について川下から川上まで遡って考えてみます。

最終製品メーカーのヒット商品

ノートPC や、スマホ、タブレット、ウェラブルデバイスなどの軽量化と形状の自由化が進み、今までできなかったデザインの製品が生まれるきっかけになりそうです。
第二のアップルの誕生があるかもしれません。

半導体製造メーカーの優勝劣敗

インテル、サムスン、TSMC、クアルコム、エヌビディア、キオクシアなど半導体の完成品メーカーの製品化のスピードによって業界地図が変わると考えられます。

個人的には最も情報が早く出てくるのは半導体メーカーからだと予測します。ユーザーと製造プロセスの両方を知っているからです。

ICチップの製造プロセス

シリコン製ICチップに関わるメーカーを概観すると以下のようになります。

  1. 純度を上げ金属シリコンのインゴットにする【信越化学工業、SUMCO】
  2. インゴットを薄切りにして研磨しシリコンウェハーにする【不二越、ディスコ】
  3. シリコンウェハー上に薬品で皮膜を作る【JSR、東京エレクトロン、アプライドマテリアルズ】
  4. フォトマスクと露光装置で回路印刷【HOYA、レーザーテック、Canon、Nicon、ASM】
  5. エッチング、ドーピング皮膜剥離【東京エレクトロン】
  6. 切り分け、端子接続、モールディング【ディスコ】
  7. 完成したICをテストする【アドバンテスト】

C-BAsの素材としての特性に応じて各工程への影響度合いは異なりそうです。

少なくとも物質が異なるので、最初のインゴットとウェハーの仮定には影響しそうです。特にヒ化ホウ素の原材料の調達と化合は現在行われていません。最も新たな需要を生む可能性があります。関係する素材メーカーの業績には大きく影響することでしょう。

また既存の化合物半導体は、シリコン単結晶半導体と比べると、脆くて加工が難しいとされています。C-BAsも化合物半導体ですので、加工に用いる装置に新たな需要が生まれる可能性があります。

一方、皮膜をかけたり、印刷、モールディング、テストまでのプロセスは変わらないかもしれません。こちらも素材の特性によると思います。

差し当たってできること

上記はいずれにしても仮定の話で現時点では現実味がありません。差し当たってできることとしてまずは「C-BAs」という単語に敏感になりたいと思います。しばらく半導体業界関連銘柄をフォローしてニュースについていきます。

ただし、株式投資の点からは、実用化関連のニュースが出た場合でもすぐに飛び付かず、どの製法が王道になるのかは吟味が必要です。銘柄選択はプロの方達にあまり遅れないようついていければと思います。

新技術によって既存の産業が大きく発展するかもしれないと考えると夢があります。もしかしたらテンバガーもあるかもしれません。想像力をかなり膨らませて記事にしてみました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました