2022年はドル円レートが大きく動いた。1月月初115.0円から、10月高値151.9円まで36円(33%)上昇後、12/30終値131.1円まで20円(14%)下落、それでも年初比で16%上昇した。
ドル建資産を保有する方は、年前半は取引せずとも評価額が増加し、年後半は逆に減少したことであろう。または、円高のトレンドを捉えて、円建ての資産に入れ替えられた方もおられたかもしれない。
2023年は130.9円から始まり、1/13終値は127.9円と円高が進んでいる。
今後、テクニカル的には少なくとも1〜2ヶ月の短期トレンドは円高が続くかもしれない。一方でファンダメンタルでは、日本の金融政策が再び数十円単位の大幅な円安を招くかもしれない。
今後の為替動向を正しく予測することは不可能であるが、あくまで筆者個人が投資先を選択するための仮説を立ててみた。
テクニカルは円高トレンド
ドル円レートは日足も週足も下値を切り下げながら推移しており、下降トレンドと見える。チャート上は下げ止まる気配は見えない。
ファンダメンタルは大幅円安の可能性
要因1:アメリカの利上げ継続
米国の政策金利は2022年に0.25%から4.50%に上昇。ターミナルレートの見通しは不明だが2023年1月時点も利上げは継続中。
FOMCパウエル議長はインフレ率を2.0%に戻すことに強くコミットする姿勢を保っている。インフレとは通貨価値の下落。自国通貨価値の維持は中央銀行としてシンプルな動機だと思う。
不労所得で生活できる資産家が増え、労働力が不足していることがインフレの理由の一つかもしれない。金融資産の下落と就業者増加を目指しているように思える。
減速の予想は取り沙汰されても、未だ上限と利下げ時期の見通しは示されていない。個人的には、直近で株価がリスクオフとなった水準、例えばコロナショック時の水準まで続くと予想する。
利上げが継続し、次の緩和策が始まるまでドル高傾向は続くと考えられる。

要因2:日本の利上げの難しさ
日本は食糧、資源、エネルギーなど生活必需品を輸入している。生活維持のため円の価値を維持する必要がある。
各国の中央銀行が利上げをする中、日本銀行は長期国債の金利に上限を設けて、それを保つ価格で国債買い入れを続けている。各国との金利差が開くので円安を招く政策だ。
日銀が利上げをすると、各国との金利差は縮まるので一旦は円高に向かうと思われる。ただし、日本には利上げを簡単に行えない事情があるようだ。
2023年予算は税収が69兆円、新規国債発行が36兆円だ。増税は当然ながら不人気で、増税と緊縮財政による王道の財政健全化は政治的に難しい。赤字国債を日銀が買うことが常態化している。
今や日銀の資産は購入済国債がその70%を占める。利上げをすれば資産である国債の価値が下がる。資産を裏付けにした円の信用が下落する。また、政府は利払のための更なる国債発行を求められる。
要因3. 海外からの信頼低下懸念
円を持てば日本の物やサービスが手に入るという信頼感が、円の根本的な価値である。日本の緩やかな生産力低下は円安の根本的な要因となろう。
また、前項のように円の価値に疑いが生じた場合、海外資本が円を売る動きは加速する恐れがある。
要因4. 個人資産の海外移転
長期的に円の価値が減っていくのであれば、個人資産を守るには外貨建資産への投資が合理的な選択肢である。
現在、日本の個人金融資産の大半は円建の銀行預金が占めている。一部が外貨建商品に向かう場合、円安の要因となる。
個人的予想と投資の方向
個人的には円安を予想
以上を総合して、テクニカルから短期的には円高であるが、ファンダメンタルから今後も数ヶ月単位では円安が進むとの仮説を持っている。
今後、長期金利が上昇するとなると、短期的には日米金利差縮小により円高とあるであろうが、同時に円の裏付けである日銀の資産価値が下落することとなる。
現在の円高は押し目で、いずれ1ドル150円を超える水準に戻る可能性もあると考える。場合によっては、急激な通貨価値の下落(ハイパーインフレ)が起きてしまう可能性も想定しておくべきである。
円安なら輸出企業の株価が上昇
再び円安に戻ると仮定すると海外売上比率の高い製造業にとって競争力と為替差益で円安のメリットがある。ヤマハ発動機、AGC、信越化学、日本製鉄など高配当で海外売上比率の高いメーカーを中長期で保有したい。
円高の場合は米国株と米ドル
予想が外れてさらに円高が進む場合、強い円を活かしてASEAN株を買い増す。また、米ドル購入の押し目と捉えて余裕資金は米ドルに換金するとともに米国株が下がれば購入する。
まとめ
個人的には円安ドル高に戻るとの予想を元に以下の方針で投資を続ける。
資産 | 方針 |
日本株 | 日本市場は横ばいまたは下落を想定、高配当の輸出企業を購入 |
米国株 | 下落を想定し個別株は様子見、ベアファンド少数保有 |
ASEAN株 | 中長期の成長を見込んで定期的に購入 |
米ドル | 135円以下であれば円の余裕資金をドル換金 |
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