過去の利上げは遅れて効いた
2022年は10月にかけ、NYダウ、NASDAQ、S&P500の三指数が下落し、その後回復した。果たして底を打ったのだろうか?
’22/1/2(a) | ’22/10/12 | ’23/2/17 | |
NYダウ | 36,321.59 | 29,210.85 | 33,826.69 |
NASDAQ | 15,732.50 | 10,417.10 | 12,358.18 |
S&P500 | 4,778.14 | 3,577.03 | 4,079.09 |
VIX指数 | 17.60 | 33.57 | 20.02 |
筆者は、2023年以降もう一段下落すると予想する。米国の利上げが続いているからだ。2022年2月に0.25%だった政策金利を2023年2月に4.75%まで引き上げた。到達点は5%超と予想される。
過去3回の利上げは政策金利が最高点に到達後しばらく株価は維持され、数ヶ月〜2年後にドットコムバブル崩壊、リーマン危機、コロナ危機と暴落が起きた。
米国利上げ期間 | 利上げ前 | 利上げ到達点 | 利上げ終了後の大幅な株価下落 |
1999年6月-2000年5月 | 4.75% | 6.50% | 2001年頃(ドットコムバブル崩壊) |
2004年6月-2006年6月 | 1.00% | 5.25% | 2008年9月頃(リーマン危機) |
2015年12月-2018年12月 | 0.25% | 2.50% | 2020年3月頃(コロナ危機) |
2022年2月から継続中 | 0.25% | 4.75%(継続中) | ? |
今回も同じだと考え、米国株指数の下落で価格が上がるベア(インバース)ファンドに興味を持った。
米国株ベア(インバース)レバレッジファンド
具体的にはSPXS 、TECSの二種に着目した。いずれも対象指数の日々の変動率のー3倍の変動率となるように設計されている。
略称 | SPXS | TECS |
正式名称 | デイリーS&P500ベア3倍ETF | デイリーテクノロジー株ベア3倍ETF |
種類 | 上場投資信託 Exchange Traded Fund | 同左 |
発行元 | Direxion | 同左 |
上場先 | NYSE | 同左 |
通貨 | ドル建 | 同左 |
対象指数 | S&P500指数 | S&P500のテクノロジーセレクトセクター指数(IXTTR) |
主な組入銘柄 | S&P500銘柄 | (2022/12時点)Microsoft, Apple, Nvidia, Visa, Master, Broadcom, Cisco, Accenture, Adobe, Texas instrumentなど S&P Dow Jones Indices Technology Select Sector |
経費率 | 0.95% | 同左 |
変動幅ではなく変動率に連動するので、上下を繰り返すと指数と乖離する。例えば指数が±を繰り返して元に戻っても資産は減少する。
対象指数 | 変動幅 | 変動率 | 変動率*-1 | ベア1倍 | 変動率*-3 | ベア3倍 | |
1日目 | 100 | 100 | 100 | ||||
2日目 | 105 | +5 | +5% | -5% | 95 | -15% | 85 |
3日目 | 100 | -5 | -4.76% | +4.76% | 99.75 | +14.29% | 97.1 |
4日目 | 105 | +5 | +5% | -5% | 94.76 | -15% | 82.6 |
5日目 | 100 | -5 | -4.76% | +4.76% | 99.5 | +14.29% | 94.4 |
指数が下降トレンドの場合だけ継続保有による利益を期待できる。レンジ相場で継続保有する場合は、漸減を前提に現物株急落の保険と考えるべきである。
指数急落時にベア資産は大幅に値上がりするが、指数が上昇に転じると急速にベア資産は下落する。すぐに利益確定する必要がある。
経費以外に外国株売買手数料がかかるため、小ロットでは利益が出にくいことにも注意。
取引履歴
2022年12月の取引開始当初は数日間でのスイング取引を想定していた。実際には2ヶ月に及び含み損を抱えたまま継続保有している。
数ヶ月〜1年後には大幅な下落が起こるかもしれないと想定し、保険料を払い続けるものと合理化している。
取引価格 | 実現損益 | 終値 | 関連 | 指標 | |||
取引 | SPXS | TECS | (税前) | SPXS | TECS | VIX指数 | Fear &Greed |
2022/11/28 打診買い | $20.07 | $35.58 | $20.52 | $36.63 | 22.21 | 60Greed | |
2022/11/30 買い増し | $20.67 | $18.74 | $31.11 | 20.58 | 70Greed | ||
2022/12/1 買い増し | $32.21 | $18.75 | $31.92 | 19.84 | 63Greed | ||
2022/12/9 CPI,FOMC前様子見 | $20.83 | $35.85 | 22.83 | 53Neutral | |||
2022/12/13 買い増し | $19.50 | $32.33 | 22.55 | 63Greed | |||
2022/12/14FOMC前買い増し | $31.61 | $19.88 | $33.14 | 21.29 | 57Greed | ||
2022/12/21 指数下止り売却 | $22.005 | $38.67 | +$1,473.85 | $21.60 | $37.79 | 20.07 | 38Fear |
2022/12/22 指数下げ再購入 | $40.10 | $22.54 | $40.64 | 21.97 | 35Fear | ||
2022/12/27 指数下げ再購入 | $22.50 | $22.46 | $41.74 | 21.65 | 36Fear | ||
2023/1/20 保有中 | (含み損)-$2,434 | $20.17 | $34.39 | 19.85 | 59Greed | ||
2023/2/1FOMC利上げ0.25%に縮小 | (含み損)-$4,852 | $17.95 | $28.55 | 17.87 | 69Greed | ||
2023/2/3雇用統計失業率3.4%新規就業+51万人FearGreed80 購入 | $27.35 | (含み損)-$5,562 | $17.74 | $26.91 | 18.33 | 76Extremely Greed | |
2023/2/7 パウエル議長会見後 | (含み損)-$6,332 | $17.35 | $25.84 | 18.66 | 79Extremely Greed | ||
2023/2/24 CPI6.4%, PCE5.4%予想より上振れ | (含み損)-$2,909 | $20.00 | $30.21 | 21.67 | 59Greed | ||
2023/3/3 様子見 | (含み損)-$4,806 | $18.91 | $27.63 | 18.49 | 55Neutral |
VIX指数、Fear&Greed指数を参考にする
それでも折々で利益を出したいと考え、VIX指数とFear&Greed指数が米国株指数の先行指標として参考になるか調べてみた。
VIX指数
VIX指数(Volatility Index)は株価指数の変動幅を示す指数だ。恐怖指数とも呼ばれる。シカゴ・オプション取引所(CBOE)が設定している。同取引所の説明は以下の通りだ。
VIX指数はS&P500指数について市場が予測する最新のボラティリティを示す。リアルタイムのS&P500指数売買オプション指値の中間値から計算される。
具体的には、市場が今後30日間でS&P指数がどれだけ変動すると考えているか示す。
シカゴ・オプション取引所ホームページから筆者要約
なお、参考までに計算式は以下の通りだ。
Kiは行使すると損失が出るオプション行使価格、ΔKi はその前後の行使価格の差額の半分、Q(Ki)はKiの現在の取引価格。ざっくり言うとΔKi とQ(Ki)をかけてKiの2乗で割ったものの合計の平方根がσである。VIX指数はσに100をかけたものである。
筆者にとって計算式の理解はこれが限界だ。将来の行使価格の変動幅が大きいか、オプション価格が高いとVIX指数が上がるようだが自信はない。

Fear & Greed指数
Fear & Greed指数(Fear & Greed Index)はCNNが設定する市場の過熱度を表す指数だ。
Fear & Greed指数は市場動向と株価が適正かを測る目安。過度な恐怖は株価を押し下げ、過度な欲望は株価を押し上げる。
指数は、株式市場の動向を示す以下、7つの指標によって計算される。
市場の勢い(Market Momentum):S&P500指数が125日移動平均の上にあればGreed、下にあればFear。
株価の強さ(Stock Price Strength):NYSE株で52週の新高値銘柄数と新安値銘柄数の比較
株価の幅 (Stock Price Breadth) : McClellan Volume Summation Index。プラスであれば上昇基調、低いまたはマイナスであれば下落基調でFear。
プット&コールオプション (Put and Call Options): プット&コールオプション5日平均。1以上であれば下落基調でFear。
ボラティリティ (Volatility): VIX指数とその50日平均。VIX指数が上昇していればFear。
逃避先需要(Safe Haven Demand):過去20日の株式と債券の利回り差。債券の方が利回りが良ければFear。
ジャンク債需要 (Junk Bond Demand): ジャンク債と投資適格債の金利差が近いとGreed。
それぞれの指標について、通常の変動幅からどれだけ乖離するかによって0を最大の恐怖、100を最大の欲望として点数をつける。
CNN Business Fear&Greed指数より筆者要約
VIX指数・Fear&Greed指数とSPXS・TECSの関係
2022年9月〜2023年2月の各銘柄及び各指数の終値での推移をグラフにした。以下のことが読み取れる。

- VIX指数(青)とSPXS(グレー)、TECS(黄)はほぼ同様のトレンド
- Fear&Greed指数(緑)はVIX指数、SPXS 、TECSと逆相関
- 数値の振れ幅はVIX指数が18−34と低位で推移するのに対しFear&Greed指数は15−80と下限0から上限100の中で幅広く推移する。
つまり、Fear&Greed指数が上限・下限の近くでトレンド転換したとみられる時は、SPXS、TECSもトレンド転換している可能性がありそうだ。
まとめ
Fear&Greed指数がSPXS、TECSのトレンドを予想する参考になりそうだ。上限に近いExtreme Greedの時は、原指数が天井、下限に近いExtreme Fearの時は原指数が底に近い可能性が高い。
SPXS 、TECSはExtreme GreedからGreedやNeutralに向かいそうなタイミングで購入したい。逆にExtreme FearからFearやNeutralに向かいそうなタイミングで売却したい。
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