国際的な競争で鍛えられた高配当の輸出企業
日本製鉄は日本首位の鉄鋼メーカーだ。
世界では、粗鋼生産量で2000年代初頭まで首位だったが、2021年は1位中国、2位欧州、3位中国企業に次ぐ第4位。5位以下も中国、韓国、インド企業が続き、国際的に厳しい競争にさらされる。
景気後退時は、生産能力が余剰となるため効率化が必要となる。国内の高炉の統廃合など「構造対策」による収益力強化を図っている。
製品は、薄板、厚板、棒線、建材、鋼管、チタン、ステンレスと幅広い。自動車や機械メーカー、土木・建設、エネルギー・インフラ企業などが主要顧客である。
研究開発費664億円、研究者800名、保有特許30,000件(2022年3月)に裏打ちされる技術力を活かした高級素材に強みがある。
例えば、ハイテン(高張力鋼、High Tensile Strength Steel)は、炭素量や添加する合金、熱処理条件を工夫して作られる。高強度で軽量な自動車に欠かせない。
加熱しながらプレスをするホットスタンプなど、高強度と高精度を両立する加工方法を含めて顧客に提案している。
また、国が掲げる2050年のカーボンニュートラルへの対応も求められる。従来の生産過程は鉄鉱石から石炭を用いて酸素を除くため二酸化炭素を発生させる。
対応として、電炉による生産、水素による高炉水素還元の他、大手調達先Anglo American社と共同で高品位鉄鉱石による排出量削減を検討開始している。
関連して、最近ではクリーンエネルギーである水素の活用にそなえ、水素脆弱性を克服するステンレス鋼管も開発している。
引き続き、顧客である自動車、機械などの日本メーカーの競争力に貢献するとともに、技術力を強みとして効率性とカーボンニュートニュートラルの課題に対応することを期待したい。
業績と株価
過去最大の売り上げは、2022年3月期の6兆8,089億円、事業利益は同年の9,381億円だ。PERが3倍台、PBRが0.5倍台の割安な水準だ。配当性向は30%を目安とし、配当利回りは6%を超える。
割安高配当株を選ぼうと営業利益率10%以上、配当利回り3%以上、過去5年の増収率10%以上、海外売上比率30%以上、ROE10%以上などの基準でスクリーニングすると、毎回日本製鉄が含まれる。
2023年3月期の会社予想は、売り上げ8兆円、純利益6,700億円と増収増益で過去最高の見込みだ。
一方で注意を引かれる点もある。2020年3月期に営業赤字、減配している。2020年4月には直近の最安値798.1円をつけた。市況と業績によってその水準まで下がる可能性もある。すぐに大幅下落はないとしても、保有にあたり業績への注意は必要だ。
なお、発行済み株式は統合以来10株⇨1株に統合されたことを除けば950,321,402株で変わっていない。株価推移と時価総額の推移は一致している。
2022/9/30 | 2023/2/10 | ||
時価総額 | 1兆9,068億円 | 時価総額 | 2兆6,452億円 |
株価 | 2,006.5円 | 株価 | 2,783.5円 |
前期売上 | 6兆8,089億円 | 売上会社予想 | 8兆円 |
前期純利益 | 6,373億円 | 利益会社予想 | 6,700億円 |
直近総資産 | 9兆244億円 | 直近総資産 | 9兆4,800億円 |
直近自己資本 | 3兆7,314億円 | 直近自己資本 | 4兆74億円 |
PER | 3.07倍 | PER | 3.8倍 |
PBR | 0.57倍 | PBR | 0.63倍 |
ROE | 20.5% | ROE | 16.9% |
ROA | 7.3% | ROA | 7.2% |
自己資本比率 | 41.3% | 自己資本比率 | 42.2% |
配当予想 | ¥160 | 配当 | ¥180 |
配当利回り(予想) | 7.2% | 配当利回り | 6.5% |
信用倍率 | 6.84 | 信用倍率 | 4.54 |
取引の経緯
日付 | 取引 | 理由 | 取引価格 | 損切設定 |
2022/9/20-9/28 | 購入 | 9月の配当落日前に高配当銘柄を購入したかった | 2,191円 | 10/3安値1,960円 |
2022/10/21 | 購入 | 円安継続、利益上振れ期待 | 2,102円 | 1,960円 |
2022/10/21-11/1決算前 | 購入 | 2013年度売上5.5兆・純利2,427億・2013/12時価3.4兆円⇨売上予想8.0兆・純利6,000億・2022/10月時価1.9兆円で上昇余地あり。鉄鉱石下落+円安で利益上振れ個人予想 | 2,031-2,103円 | 2021/12安値1,690円 |
2022/11/1 | 様子見 | 中間純利益3,724億、年間予想6,700億と上振れ、中間配当70円⇨90円に増配。設備再編による損益分岐点の低下、製品の高付加価値化、買収による海外事業の生産効率化、原料権益の強化、非鉄金属での収益性向上 | (終値2,080円) | 2021/12からの下値支持線1,999円 |
2022/12/21 | 様子見 | 日鉄物産TOBで80%の連結子会社化発表。買付費用1,370億円。日鉄物産はストップ高。大阪製鐵や山陽特殊製鋼など他の上場子会社も注視したい | (終値2,205円) | 2022/6からの下値支持線2,099円 |
2023/1/20 | 様子見 | 1/10に2,340円近辺の上値抵抗線を上抜けてから上昇中。中間配当だけでも3.4%の配当利回り、2/9の3Q決算で配当据置以上なら6%超の高配当となる | (終値2,628円) | 2022/6からの下値支持線2,128円 |
2023/2/10 | 様子見 | 2/9に3Q決算、年間予想純利益6,700億を据え置き。実力ベースの事業利益は6,900億ドルと上方修正。年間期末配当は90円で配当利回り6.5%。株価も上昇 | (終値2,783円) | 2022/12からの下値支持線2,400円 |
2023/2/17 | 様子見 | 2/9から7日続伸、3,000円台に乗る | (終値3,050円) | 1/24と2/8安値を結んだ支持線2,700円 |
まとめ
日本でトップシェア、世界で4位の鉄鋼メーカー日本製鉄は、製造業と建設業の主要材料である鉄を供給してきた日本経済に必須の企業である。厳しい競争の中、収益力強化を図っている。
特に現時点では過去最高の業績が配当で還元されており割安と判断する。今後も日本経済が続く以上、長期的に保有したい企業の一つである。
一方で、過去の株価推移を見ると、景気動向により株価が半分以下となる可能性もある。資産保全のためには一旦手放す可能性も考えつつ保有したい。
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