フィリピン最古の財閥アヤラグループは、スペイン出身のAyala氏が共同創業者として1834年に設立した醸造所に端を発する。Ayala家9代目当主Fernando Zobel de Ayala氏が現在のグループのトップだ。
従業員数はグループ連結で117,900人である。アヤラグループとして、北米、中米、欧州、中東、インド、東南アジア、中国、日本に拠点を持つ。
コングロマリット
アヤラ・コーポレーション(AC)が持株会社として、下図のように、傘下のグループ企業に出資している。

グループ会社のうち持株会社AC、不動産開発Ayala Land、フィリピン最古で預金残高2位の大手銀行BPI、最大手通信会社のGlobe、クリーンエネルギー発電のACエナジーなど、主要事業会社はフィリピン証券市場に上場している。
事業内容 | 2021年度売上 | 2021年度純利益(対前年比) | AC持分 | |
Ayala Corporation(AC) | アヤラグループの持株会社 | 2,558億ペソ | 278億ペソ(+62%) | ー |
Ayala Land(ALI) | 不動産開発会社 | 1,061億ペソ | 122億ペソ(+40%) | 46.3% |
AREIT Inc. (AREIT) | ALI子会社のREIT | 33億ペソ | 24億ペソ | ー |
Bank of Philippine Islands(BPI) | フィリピン2位の銀行 | 974億ペソ | 239億ペソ(+12%) | 48.5% |
GLOBE(GLO) | フィリピン最大の通信会社 | 1,515億ペソ | 237億ペソ(+27%) | 30.8% |
AC Energy(ACEN) | 再生エネルギー発電会社 | 260億ペソ | 53億ペソ(+22%) | 64.7% |
上記以外にも、2021年12月末時点でManila Water Corporation, iPeople, Integrated Micro-Electronics, Inc. (IMI) , AREIT, Inc. (AREIT), AyalaLand Logistics Holdings, ACE Enexor, Inc. (ACEX) が上場する。
特に筆者が投資対象としている銘柄を以下に挙げたい。なお、通信最大手のGLOBEについては別の記事に記載している。
アヤラ・コーポレーション(AC)
2023年1月27日時点の株価は750ペソ、時価総額は4,643億ペソである。配当利回りは0.9%、PER14倍。
特に割安とは言えないが、グループの持株会社として業績と配当が安定的である。長期保有対象として魅力を感じ、筆者は親子上場している事業会社とともに購入している。
グループの本拠地は、マニラ南部にアヤラが開発した商業都市Makatiにある。
Ayala Land(ALI)、Ayala REIT(AREIT)
そのMakatiは第二次大戦後に金融街としての地位を確立した。Ayala Centerと名付けられた一帯には、大手銀行、保険会社の高層ビル、欧米のハイブランド店を納めたショッピングモールが並ぶ。
ラッフルズやペニンシュラなどの高級ホテルもある。清掃は行き届き、私設警備会社が巡回し治安が良い。首都鉄道のAyala駅はモールと隣接する。新興の都市と比べると若干落ち着いた佇まいで、東京に例えると、丸の内のイメージだ。
Makatiと同様に、外国人が商用でフィリピンに住む時に便利な街として名が挙がるのもアヤラが開発したBonifacio Global City(BGC)だ。
海外旅行ガイドに掲載されるファッション・飲食の最先端の街でもある。シャングリラやグランドハイアットなどの高級ホテル、ショッピングモールの他、無印、ユニクロ、丸亀製麺など日系の店舗も充実し、2022年には三越伊勢丹も開店した。
欧米の投資銀行の巨大なビルや外国人向け高級コンドミニアム、フィリピン証券取引所や日本人学校、インターナショナルスクール、ブリティッシュスクールもある。東京に例えると六本木のイメージだ。
Makati、BGCともマニラ旧市街の南側に新たに開発された。ニノイアキノ国際空港から10km以内、空いていれば20分程と交通アクセスが良い。
他にはマニラの南の郊外都市Alabanもアヤラによって開発された。計画的に建てられたオフィスビルにハイテク企業が入居する。贅沢にスペースを使ったまちづくりがジョガーにも人気の地域である。東京に例えると、さいたま新都心のイメージだ。
短期滞在・長期滞在いずれも快適、商業の機能も集中し清潔で治安が良い。国内外の人々と富を魅きつける魅力が十分にあり、都市開発は成功していると感じる。
このようにアヤラの中核事業として、都市を丸ごと造るような不動産開発を行っているのがAyala Land(ALI)である。ALIは2023年1月27日時点で32.9ペソ、配当利回りが0.8%、PER29倍。
そしてALIが開発した工業団地やオフィスビルなど企業向けの賃貸物件はAyala REITとして上場している。AREITは2023年1月27日時点で35.9ペソ、配当利回りが5.5%、PER14.8倍。
筆者は産業分野の持続的な発展に期待してAREITを保有中である。
Bank of Philippine Islands(BPI)
BPIはアヤラグループ傘下の大手銀行で、アヤラグループの主力行である。1851年に創業したフィリピンそして東南アジアで最初の銀行との歴史を持つ。
2022年9月時点で、2.5兆ペソとフィリピンで第3位の資産規模を誇る。

2023年1月27日時点で110.1ペソ、配当利回りが1.9%、PER14.0倍。
ACエナジー(ACEN)
発電会社のACエナジーは、火力発電の他、太陽光、風力、地熱発電をフィリピン国内で行なっている。エネルギー源を輸入に頼り、原子力発電の実用化にも時間を要する中で国益に関わる事業といえよう。
さらにオーストラリア、米国、インドでの太陽光発電、ベトナムでの風力発電、インドネシアでの地熱発電と、海外各地でも再生エネルギー発電への投資を拡大中である。
2021年度の発電能力は、再生可能エネルギーが490MW、火力が540MW、合計1.03GW。2022年9月時点では、再生可能エネルギーが3,700MW、火力が340MW、合計4.04GWまで急進している。
株価は2023年1月27日時点で7.39ペソ、配当利回りが0.81%、PER50倍。成長に期待して保有中である。
まとめ
アヤラは、強力な不動産事業を中心に、金融、通信、インフラ、エネルギー、ヘルスケア、フィンテックと幅広くフィリピンの経済産業に事業展開するフィリピンを代表するコングロマリットだ。
個人的に気になる点は、親子上場をしていて資本関係が複雑に見えること、創業家の影響がどのよ
期待したい点は、今後1.1億人の若者による旺盛な消費が予想される国内市場を中心に、長期的で安定した成長である。10年後にフィリピンGDPと共に、収益、株価とも何倍にも増えていることを期待してAC、AREIT、ACエナジーを定期的に買い増している。
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