インドネシアを代表する財閥
アストラ・インターナショナル(Pt Astra International Tbk)は1960年頃からトヨタ、ホンダなどの代理店として成長してきた大手財閥企業だ。
現在もトヨタ、ホンダ、レクサス、プジョーやBMWなどの代理店としてインドネシアの自動車販売シェアの過半を占める。
トヨタ、ホンダなど日系メーカーと合弁で製造も行う他、鉱山運営、建設、不動産開発、金融サービス、保険事業、IT事業を持つ。
筆者がインドネシアに滞在した時の印象は、超一流企業で日本で言えば三井、三菱グループといった位置付けだった。
540ページに及ぶ年次報告書には財務諸表の他、経営方針、経営陣の人となり、資本関係、各事業の内容が詳細に記されており、ガバナンスに注力していることが伺える。
特徴的なのはマンダリンオリエンタルの親会社として知られる英資本のJardin Mathesonが50.11%を握ることだ。アジア通貨危機後の2000年、アストラの経営が厳しかった時に取得している。
インドネシアの労働力と日本の技術から生み出される利益の50%がイギリスの資本家に帰属する構図が世界経済の縮図に見える。
インドネシア株と株式時価総額GDP比率
ここでインドネシア株の魅力を認識するため、日本、アメリカ、インドネシア、フィリピンの人口、平均年齢、一人当たりGDPを挙げてみたい。
国名 | 人口 | 平均年齢 | 一人当りGDP |
日本 | 1.2億人 | 48歳 | 39,000ドル |
アメリカ | 3.3億人 | 38歳 | 69,000ドル |
インドネシア | 2.7億人 | 30歳 | 4,400ドル |
フィリピン | 1.1億人 | 25歳 | 3,600ドル |
ピークは越えた日本、壮年でまだまだ最大の稼ぎ頭のアメリカ、インドネシアやフィリピンはまだ若くてこれから稼ぎが増えそうだ。
次にGDP(a)、株式市場時価総額(22年7月)(b)、そして”時価総額GDP比率”(b/a)を比べてみる。一般的ではないが市場を選ぶ際の参考に筆者独自で算出した。
国名 | GDP(a) | 株式市場時価総額(b) | 時価総額GDP比率(b/a) |
日本 | 4.9兆ドル | 3.7兆ドル | 76% |
アメリカ | 23.0兆ドル | 36.3兆ドル | 158% |
インドネシア | 1.2兆ドル | 0.118兆ドル | 10% |
フィリピン | 0.4兆ドル | 0.0506兆ドル | 13% |
GDPは各国の経済活動が一年間に産む価値、時価総額は株に集まるお金だ。日本ではGDPの0.8倍分のお金が、アメリカではGDPの1.6倍分のお金が株式市場に集まる。
対するインドネシア、フィリピンはGDPの0.1倍程度しか集まっていない。日米に比べて時価総額GDP比率が上がる余地はありそうだ。
アストラ・インターナショナルの業績と株価
アストラ・インターナショナルの主要事業は自動車、インフラ開発だ。インドネシアの経済規模と個人所得の拡大に伴い成長が期待できる。
2021年の年間売上は約2.1兆円、経常利益率は10%超、連結人員は18万人超だ。国の基幹産業を中心とした事業内容は多岐にわたり規模が大きく、財務は健全だ。
インドネシア株式市場に上場し、時価総額は現在約16.8B$で6位である。過去に首位だったこともある。
過去10年の株価は2020年のコロナ直後の下落を除き、おおむね5,000ルピア〜9,000ルピアの間で上下している。配当は過去10年100〜200ルピア前後で推移している。
会計年度 | 中間配当 | 期末配当 | 会計年度 | 中間配当 | 期末配当 | 会計年度 | 中間配当 | 期末配当 |
1990 | 10 | 15 | 2002 | – | – | 2014 | 64 | 152 |
1991 | 10 | 12.5 | 2003 | 5 | 17 | 2015 | 64 | 113 |
1992 | 10 | – | 2004 | 10 | 27 | 2016 | 55 | 113 |
1993 | – | 22.5 | 2005 | 10 | 34 | 2017 | 55 | 130 |
1994 | – | 8 | 2006 | 15 | 29 | 2018 | 60 | 154 |
1995 | – | 9 | 2007 | 16 | 48.4 | 2019 | 57 | 157 |
1996 | – | 12 | 2008 | 30 | 57 | 2020 | 27 | 87 |
1997 | 5 | 17 | 2009 | 29 | 83 | 2021 | 45 | 194 |
1998 | – | – | 2010 | 47 | 113 | 2022 | 88 | 554 |
1999 | – | – | 2011* | 60 | 138 | |||
2000 | – | – | 2012 | 66 | 150 | |||
2001 | – | – | 2013 | 64 | 152 |
取引の経緯
購入(2019/12)
日本株、米国株以外に魅力ある投資対象を探す中で、上記の通り内需の成長の可能性、株式市場への資金流入の可能性という点でインドネシア株に魅力を感じた。難点は日本の証券会社から購入すると為替が2%程割高になること。そのため短期売買には適さない。
長期保有を前提に、安定成長と配当が望める銘柄としてアストラ・インターナショナル社に着目し比較的安値圏と判断して6,500ルピアで購入した。
買い増し(2020/5, 2021/7)
移動制限開始直後の2020年5月には一時的に過去10年の最安値3,510ルピアまで下落した。一時的な下落と判断し3,620ルピアで買い増した。2021年7月には4,780ルピアで買い増した。
保有継続(2022/7/25)
2022年4月に7,700ルピアまで上がり7月時点では6,000ルピア(56円)程度まで下落。様子見で保有を継続と判断した。
保有継続:増収増益増配(2022/11/20)
10月28日に発表された2022年12月期の第3四半期決算は、1−3Q売上が221兆IDRと+32%、利益は32兆IDRと+68%の増収増益。11月18日の終値は6,225IDR(57円)。
なお、10月31日に支払われた2022年12月期の中間配当は88IDRと+43IDRの増配。来年5月に払われる予定の期末配当も2021年12月期194IDRからの増配を期待し、保有を継続する。
保有継続:(2023/2/28)
2月27日に発表された2022年12月期決算は、売上301兆IDRと+29%、純利益40兆IDRと+58%の増収増益。売上・利益とも過去最高を更新した。
セグメント別の利益内訳は重機・資源エネルギーが23兆IDRと稼ぎ頭。続いて自動車が10兆IDR、金融が6兆IDR、農業が1.7兆IDR、インフラ・IT・不動産が1兆IDR。
期末配当は554IDRと昨年期末配当+360IDRの大幅増配、年間配当は640IDRとなった。
2月28日の終値は6,100IDRと前日比+5.17%上昇。それでも配当利回りは10%超となった。
まとめ
以上、アストラインターナショナルについて概観した。東南アジア最大の市場で交通インフラ、資源ビジネスに関わり、コーポレートガバナンスもしっかりしている優良企業だ。
株価は変動はあるものの10年間ボックス圏で、配当も継続している。株価が下がれば買い増しながら保有したい。
コメント